矯正専門医プログラム
矯正専門医プログラムの治療編Uは2009年3月に開講致しました。次回の診断・治療編Tは2010年2月4日開講の予定です。
1.概要
デジタル放送開始が物語っているように社会のデジタル化は止まるところがありません。この傾向は歯科界にも当てはまり従来型の診療体系に代わる、21世紀にふさわしい医療を求め、大きな転換期に来ているのも事実です。矯正治療も例外ではありません。矯正治療についても診査、診断、治療技術、マネージメントなどはデジタル化の影響を受け、大きく変わってきているものと考えられます。
また、最近、在ってはならないとされている医療過誤の報道をよく耳にします。これは氷山の一角との声もありますが、社会の医療に対する考え方に変化が現れてきているのも事実のようです。すなわち、インフォームド・コンセント、ディスクロージャ、パラダイムシフト、EBM、あるいはアカウンタビリティなどの言葉で代表されるように医療の概念そのものが変わりつつあります。その一つに、問題・患者志向型の医療(Problem(patient)
oriented system;POS)があり、欧米を中心にして広く普及し、医療界のみならず、あらゆる分野においても積極的な導入が図られています。
このような今日の社会状況や医療概念の変遷をふまえ、本研修会では、矯正主治医として適切な助言、診療を提供できるようなコースを設け、全く新しい概念から臨床矯正歯科学を見直し、考え、学ぼうとするものです。診断・治療編では、具体的な症例を通し、問題志向型(POS)の診断に基づいた治療計画をパソコンを活用しながら立案し、長期経過症例を検証しながら治療戦略を考えます。なお、治療戦略を考える上で必要になる発生学や成長発育の学問、さらには顎運動機能についてまでのBilogicalな基礎知識についても触れ、診断・治療方針と治療術式の一貫性が得られるよう配慮する予定です。また、診断・治療編T、治療編U、応用編を通し、矯正治療に必要となるパソコン、インターネット、LAN構築などの知識を深めて頂くと同時にデジタルカメラ等から得られるデジタル画像のレタッチ、さらにはDTP作業についても触れ、患者参画型診療の実践に努めます。
2.研修内容
コースは、診断・治療T編、治療編U、応用編の3コースから成り立ちます。現在、治療編Uを開催中ですが、その内容は下記に挙げますのでご参照下さい。なお、治療編U、応用編については、参考資料T、Uをご参照下さい。
1)診断・治療編Tについて
1.オリエンテーション
21世紀の矯正臨床の方向性を踏まえながら本研修の特徴、進め方について触れます。
2.研修講義内容について
1)研修達成度確認のための問題演習
研修前の各自の矯正臨床に対する考え方、矯正学の知識量などを認識し、研修後の成果と比較するよう準備します。
2)社会の医療に対する考え方の変化に呼応した問題志向型の診断、診療体系につい
て解説していきます。
3)長期経過症例を供覧し、資料の存在価値、診断・治療方針立案の持つ意義、保定
処置の重要性などを認識し、その上で、資料採得、診断手法、治療戦略立案を考
えていきます。
4)骨の科学を主体とした成長発育の知識を基に第一期治療の治療戦略について検討
を加えます。
5)パソコン使いながらパソコンの原理、応用ソフト、ネットワーク通信等の基礎事
項のについて知識と技術を確認しならがらIT化に伴う診査、診断、マネージメン
トの実際について触れます。
3.研修演習、実習内容について
POS(問題志向型診断)を実践していく上での基本となる矯正用診断資料の意義、作成方法について再認識し、さらに各種アプリケイションソフトを用いての診断資料作成およびパソコン上でのセットアップや予測顔貌の作成の実際を学びます。また、第一期治療で必要な各種装置の使用方法や本格矯正治療で問題となる顎運動機能障害についての対応についても触れます。
1)矯正用診断資料の意義とその作成法
デジタルカメラの限界と汎用性、Photoshoop・Indesignによる診断資料作成、等を含めての矯正用診断資料の意義、さらにセットアップや顔貌のpredictionについて触れます。その内容の一部を挙げます。
(1)アナログ資料とデジタル資料について
・何故、デジタル画像が必要か
・デジタル画像の入手方法
・矯正治療とデジタル画像について
(2)デジタルカメラの汎用性について
・デジタルカメラとは
・コンパクトデジタルカメラと一眼レフデジタルカメラの違いとは
・デジタル一眼レフカメラが何故必要か
・デジタル一眼レフカメラによる矯正用資料の作成について
(3)資料の保存、整理について
・パソコンを用いた管理について
・フォルダ、ファイルの作成について
・DTP作業について
・Photoshopによるレタッチについて
・レイアウトソフトによる患者報告用資料作成について
(4)症例報告について
・PowerPointを用いたプレゼンテイションについて
・症例報告を通しての治療戦略について
2)診断演習法
提示症例を通してのプロブレムリスト作成から治療目標の設定、最終治療方法決定に至るまでの実際の治療戦略をBilogicalな基礎学問の裏づけを基に演習し、さらにPOSに基づいた診断報告書、治療計画書の作成についても行なう予定です。
3)第一期治療の各種装置の汎用性について
Orthodotic、Functional、Orthopedic のそれぞれのappliancesの選択基準、使用根拠を成長発育などの基礎知識から考える予定です。
4)咬合器と下顎運動記録装置の違い
咬合器の意義、下顎運動の実際からスプリント作製とその調整法に至るまでの下顎運動機能について触れる予定です。
5)治療方針計画書の作成について
インフォームド・コンセント、アカウンタビリティなどを考えた上での報告書の作成とは何かを考え、その実際についてPhotoshop、InDesignなどを用いて演習する予定です。その内容の一部を挙げます。
(1)Photoshopによる画像加工、処理について
・基本用語などデジタル画像の基礎について
・リサイズについて
・レタッチの基本について
・印刷とモニター画像の処理の違いについて
・レイヤー機能を応用した重ね合わせについて
・画像統合について
・矯正用診断資料の作成について
(2)InDesign(PageMaker)による画像のレイアウトについて
・画像の編集、印刷について
・矯正用診断資料の編集について
4.症例報告
参加者のデジタル画像を用いての症例報告を通し、資料作成の実際、診断能力、診断・治療方針と治療術式の一貫性ある治療計画立案の実際を学ぶと同時に、デジタルカメラでの資料、パソコンでの画像処理、編集など使い方などの一層の理解を深め、その汎用性を高めていく予定です。
2)治療編U編について
臨床矯正学の習得には、診断学を含め、治療技術の習得、成長発育や加齢に伴う老化の影響による咬合の変化、治療後の長期咬合の観察、他科との関わりなどのさまざまな知識と技術が要求されます。また、動的治療後の安定性の評価なしに治療評価は下せないことから多くの臨床経験を必要としています。このような意味で単なる技術のみでは複雑化する日常矯正臨床に対応することはもはやできません。この治療編Uでは、エッジワイズ法の歴史的検証をしながらPreadjusted
brackets, Prewelded bands, Preformed wiresなどに代表される本格矯正治療装置であるSWAを全く新しい概念から学ぶものです。具体的な症例を通し、問題志向型(POS)の診断に基づいた診断用資料、治療計画、予測顔貌、セットアップなどをパソコンを活用しながら立案し、問題志向型診断(POS)を実践していきます。また、POSによって立てられた一連の治療方針・治療計画に基づいて、実際の患者の治療経過とタイポドントでの歯の移動との違いを比較しながらPreadjusted
brackets、Preformed bands、Preformed wiresなどの使用方法、さらには022スロットのSWAの特徴の一つであるエンマスにてスライディングメカニクスを駆使した6前歯をグループとした後退方法、抜歯空隙の閉鎖方法を理論的、臨床的に解説し、018スロットを用いたスタンダードエッジワイズ(クラシックエッジワイズ)の2ステップリトラクションなどとの違いを明確にしていきます。
さらに、治療後の長期経過症例を供覧し、保定処置の重要性を認識して頂くと同時に、問題志向型医療の意義を再確認して頂きます。なお、デジタル一眼レフカメラによるデジタル画像の撮影、Photoshopによる画像処理・加工、PowerPointによるプレゼンテイション、InDesignでのDTP作業を行い、デジタル画像の理解も一層深めていく予定です。
1.コース内容
1)講義
(1)022 SWAについて
*エッジワイズ法からSWAまでの歴史的検証
*何故、SWAなのか?
*何故、022スロットなのか?
*022 SWAの基本的治療手順
*022 SWAの特徴は?
・Prewelded、Preformed、Preadjusted装置とは?
・バンディング、ブラケットポジショニング、レべリングの意味とは
・Ni-Ti等の超弾性ワイヤーの有効利用
・スライディングメカニクスとは
・Standard edgewiseとSWAの診断、治療術式の対比
・差動矯正力なる理論を信じますか?
・固定の概念の見直し
(2)症例・治療戦略のディスカッション
*Phase II 治療(本格矯正治療)の治療戦略について
*SWAの治療術式
*各自症例報告
*PRODの詳読
(3)DTP作業による診断資料などの作成について
*DTP作業に必要なPhotoshopによる画像の扱いの応用
*DTP作業に必要なInDesignあるいはPageMakerによるレイアウトの基本
*診断資料の作成
*予測顔貌、セットアップ作成、および資料の作成
(4)POS実践のための文書作成について
*患者説明用のプロブレムリストの作成
*患者説明用の治療計画案の作成
*矯正治療に伴うリスクの提示
*最終治療計画書の作成について
*POS実践のための一連の診療行為について
2.演習・実習
1)診断資料の作成から治療計画の立案
(1)Problem list から Treatment alternatives の利点・欠点まで
(2)Final Treatment Planの立案手順
2)POSによる診断・治療計画後の文書作成
(1)InDesignによる治療計画書作成手順
3)治療後の予測資料の作成について
(1)Photoshop による画像処理の復習
(2)Photoshop による治療後の予測顔貌の作成
(3)Photoshop による治療後のセットアップ模型の作成
(4)InDesignあるいはPageMakerによる資料のレイアウト
(5)プリンター出力による資料作成
4)タイポドンによるSWAの治療手順
(1)治療計画に基づいた歯の移動計画
(2)歯の移動計画に基づいた治療術式の選択
(3)選択された治療術式のタイポドン上での実践
5)治療方針とタイポドント上での歯の移動様相との報告
(1)Photoshop による画像処理、PowerPointによるプレゼンテイション
(2)プレゼンテイションを通しての治療手順の検証
(3)診断・治療計画と治療成績との比較、検証
6)症例演習
(1)デジタル資料の処理、診断・治療計画・治療方針立案、報告書作成、治療術式の確認等についての総括を含め、プレゼンテイションの実施
(2)各自のプレゼンテイションを通しての治療戦略についてのディスカッション
3.長期経過症例から学ぶ
1)保定の意義
2)保定装置の選択とその実際
3)長期経過症例から治療戦略を顧みる
4)保定、保定後のマネージメントについて
2)応用編について
応用編では、、問題志向型診断(POS)によって難症例と考えられる症例を取り上げ、優先順位(priority)より治療戦略を考えていきます。特に、Phase
Tでは、Orthopedic な、あるいは Functionalなアプローチからの治療戦略を骨の発生、成長発育などのBilogicalの作用機序から論理的に、かつ長期にわたる治療成果を振り返りながら早期治療の意義を検証していきます。また、Phase
U、特に成人のおける本格矯正治療では、POSによって導き出された優先順位を元に外科的矯正治療、顎運動機能、インプラン、歯周疾患との関わりの中で治療戦略を考えていくことになります。なお、デジタルカメラ、Photoshop、PowerPoint、InDesignなどの理解を一層高め、各種報告書(HP、診断用資料、検査結果報告書、治療計画書、治療確認書、動的治療終了結果報告書、保定処置報告書など)の作成、あるいは各自症例報告を通し、デジタル画像、パソコンの理解を完全のものとして頂きます。
1.コース内容
1)講義
(1)Phase T治療について
*PerimeterにPriorityのある症例の治療戦略
*A-Pの問題にPriorityのある症例の治療戦略
*Verticalの問題にPriorityのある症例の治療戦略
*Transverseの問題にPriorityのある症例の治療戦略
(2)Phase U治療について
*Three plnaes of spaceに問題のある治療戦略について
*Interdiciplinary caseの治療戦略について
(3)DTP作業による診断、治療計画書などの印刷用資料とモニター用資料の使い方について
*グラフィックスソフトの扱い方
*レイアウトの扱い方
*Photoshopによるプレゼンテイションの方法
*DTP作業による資料の印刷方法
(4)患者参画型医療実践のための文書作成について
*患者説明用の各種診断資料の文書化
*患者説明用の各種治療報告書の文書化
*矯正治療に伴うリスク回避のための各種書類の作成
*動的治療終了報告書、保定処置報告書の文書化
*紹介者への報告書の作成について
(5)情報入手とデジタル画像とパソコン環境の整備について
*PRODによる情報入手
*デジタル一眼レフカメラの汎用性について
*ネットワーク環境整備と患者説明について
*その他
2)症例演習について
(1)受講生の症例報告と通しての治療戦略の立案について
*デジタル資料の処理、レイアウトについて
*各種資料の印刷および提示
*各種報告書の印刷および提示
*PowerPointによる症例報告
(2)症例演習
*長期経過症例を通して診断、治療方針、治療方法の検討
*各種症例を通しての治療戦略立案とディスカッション
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